2008年06月01日

「最悪」

<内容>
不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢や、取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。銀行員のみどりは、家庭の問題やセクハラに悩んでいた。和也は、トルエンを巡ってヤクザに弱みを握られた。無縁だった三人の人生が交差した時、運命は加速度をつけて転がり始める。比類なき犯罪小説、待望の文庫化。

最悪 (講談社文庫)
最悪 (講談社文庫)奥田 英朗

講談社 2002-09
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<感想>
普通の生活をしているうちにはまったく接点のなさそうな三人が、それぞれの立場でだんだん追い詰められていき、ついにはその人生が交錯するという状況を非常にうまい書き方で描いている。

その追い詰められ方がまたなんというか、読んでいてこっちの胃が痛くなってしまうくらいどうしようもない状況にズブズブとはまっていってしまうところがすごい。特に町工場のおやじが周辺住民ともめるくだりとか、性格が暗くて訳のわからない行動を取る若い従業員の扱いに困るところとかはリアルにありそうな話だし、その過程でだんだんと追い詰められてついに銀行の人が来た時に錯乱した行動を取っていくところも恐ろしかった。
またもう一人の主人公である若者が悪の道にはまっていくところは、案外現実の世界でもこういう感じなのかもしれないとも思った。

終盤、この三人(+一人)が行動をともにするところがおもしろい。普通に考えればありえない行動なのだが、この状況では確かに一緒に行動するしかないよなあ、と思わせるシチュエーションになってところがいい感じである。願わくば御殿場だけでなく、もう少しこのメンバーでここからの行動があればよりおもしろかったと思う。

文庫で650ページほどのかなり分厚さではあるが、その分量を感じさせない面白さ。その分細かいところの書き込みが見事で、それが終盤の展開に無理がないようにつなげているように思った。
posted by takasan at 16:51| Comment(30) | TrackBack(0) | ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月27日

「ルポ 貧困大国アメリカ」

<内容>
貧困層は最貧困層へ、中流の人々も尋常ならざるペースで貧困層へと転落していく。急激に進む社会の二極化の足元で何が起きているのか。追いやられる人々の肉声を通して、その現状を報告する。弱者を食いものにし一部の富者が潤ってゆくという世界構造の中で、それでもあきらめず、この流れに抵抗しようとする人々の「新しい戦略」とは何か。

ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)
ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)堤 未果

岩波書店 2008-01
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<感想>
アメリカの社会の実情を知っている人間にとっては常識であるが、初めてこの内容を知った人にとってはかなりショッキングな内容が書いてある本である。
何でもかんでも競争原理を導入し、経済優先、金持ちの都合を優先してきた社会がいかに弱者を追い込んでいくのかを具体例を示しながら表しているといってよいだろう。

大きく分けて前半は教育、医療といった福祉について、いかに弱者が困難な状況にあるかという話で、後半はイラク戦争をはじめとする軍事政策を維持するためにやはり弱者が経済的に追い込まれた状況ゆえに取り込まれていってしまうかが描かれている。
どちらも根本的な問題は「国民が真実を知らされていない」あるいは「知ろうとしていない」うちに落とし穴にはめられてしまうことが不幸の始まりになっているように思える。そういう意味で、『教育を受けている』すなわち『その行動の先に待ち受けている事態を予測する力を持つ』ということが人生にとっていかに大切なことか、ということがよくわかる。

これらの話を「遠く離れたどこかよその国の話よ」と気にも留めない人も多いかもしれないが、日本は何年かのタイムラグを経て確実にアメリカの社会と同じ状況になっているということを考えたほうが良い。それは日本自身がそう望まなくても、アメリカからそうなるように日本に対して強力な圧力を加えられているからだ。日本の政治家はそれに対して何も対抗する手段を持っていないので、今こうして太平洋を隔てた向こうの国の話がいずれ自分たち、あるいは自分たちの次の世代の子供たちに襲い掛かってくることを覚悟しておかなければいけない。

日本でもどこかの居酒屋の社長が何かにつけ「教育にも競争原理を導入すべきだ」とほざいているが、こと福祉の分野については競争原理の導入がいとも簡単に弱者の切捨てにつながってしまう、ということを我々庶民は薄々ながら気がついているからこそ、その意見が一般には受け入れられないという簡単なことにいつまでも気がつかないのが不思議でしょうがない。あんたはわ〇みのメニューでも考えてろってんだ。
posted by takasan at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月30日

「チーム・バチスタの栄光」

<内容>
第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、一気に28万部突破のベストセラー入りを果たした大人気メディカル・エンターテインメントが、ついに文庫化です。東城大学医学部付属病院の有能な心臓手術チームに起こった、連続術中死の謎を追う医療ミステリー。万年講師の窓際医師・田口公平と、厚生労働省からやってきた変人役人・白鳥敬輔の掛け合いが圧倒的に面白いと大評判になりました。脇を固めるキャラクターも個性派ばかり。コミカルなやりとりと、リアルな医療現場の描写は、現役医師である著者にしか描くことができません。新作を次々に発表し、人気作家としての地位を確立しつつある著者・海堂尊の原点が、このデビュー作に詰まっています。
チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫 599)
チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫 599)海堂 尊

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チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 600) (宝島社文庫 (600))
チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 600) (宝島社文庫 (600))海堂 尊

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<感想>
「このミス」第4回大賞受賞作品。この作品も映画になった。主演はなんとまたも竹内結子だ。原作では男性の医師なのだが、設定を変えてあるそうだ。まあ見てないから何とも言えませんが。

話の内容は、さすが大賞作品だけあっておもしろい。作者は医師でこれが初めての小説のようだけど、語り口がうまくてどんどん引き込まれてしまう。謎解きのほうは、狭い手術室で被疑者の数が限られているだけにそれほど感銘を受けるというほどではないのはしかたないけれども。

でも、この探偵役の白鳥という役人が、文庫本で言えば下巻から突然登場して主役になるのに多少面食らった。またこの白鳥という人物のキャラクター設定がどうにもうまく把握できなくて、自分ではあの「行列のできる・・・」という紳助の番組に出てくる山崎邦正に似てる弁護士のイメージで読んでしまった。おかげでなんだかしまらない本、という印象になってしまったが、映画のキャスティングを見て「あーなるほど、阿部寛ね、その線か…」と思った。失敗したぜ。

作者がこの小説を書いたのは、日本で死亡時の解剖が行われることがものすごく少ないということに警鐘を鳴らしたかったということで、そういう趣旨の本も書かれている。こちらもあわせて読むと、より一層楽しめる、かな?
posted by takasan at 16:30| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月03日

「君のためなら千回でも」

<内容>
全世界八〇〇万人が涙に濡れた衝撃のデビュー長篇。マーク・フォースター監督映画の原作。

「君のためなら千回でも!」召使いの息子ハッサンはわたしにこう叫び、落ちてゆく凧を追った。同じ乳母の乳を飲み、一緒に育ったハッサン。知恵と勇気にあふれ、頼りになる最良の友。しかし十二歳の冬の凧合戦の日、臆病者のわたしはハッサンを裏切り、友の人生を破壊した。許されざる仕打ちだった。だが二十六年を経て、一本の電話がわたしを償いの旅へと導くーー。

『カイト・ランナー』改題。

君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫 ホ 1-1)
君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫 ホ 1-1)カーレド・ホッセイニ 佐藤耕士

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君のためなら千回でも(下巻) (ハヤカワepi文庫 ホ 1-2)
君のためなら千回でも(下巻) (ハヤカワepi文庫 ホ 1-2)カーレド・ホッセイニ 佐藤耕士

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<感想>
久々に出会ったすばらしい小説。作者にとってはこれがデビュー作らしいが、米国でロングセラーになったというのが良くわかる。文庫本上下二冊ではあるけれど、長さを感じさせない良作。映画にもなっていて上映館は少ないものの人気を博しているらしい。

主人公はアフガニスタン人で、彼や周囲のアフガニスタン人の描写から私たちには馴染みの無い彼らの暮らしぶりや考え方などが垣間見えて非常に興味深い。
アフガニスタン、という国の名前や、ソ連の侵攻、タリバンの台頭などはニュースなんかで見て知ってはいても、そこに住む人々がどんな暮らしをしているかはまるで知らないからだ。
この本の中には、主人公たちの子供の頃からの暮らしが大変生きいきと描かれている。特に、原書のタイトルにもなっている凧合戦のシーンには心躍るものがある。その分、ソ連軍侵攻とその後のタリバンによる政治によって破壊されてしまったこの国の荒廃さ、悲惨さが際立っている。

主人公のアミールとハッサンは、「主人」と「使用人(の子供)」という日本ではあまりない関係の中で友情を育むが、アミールの気の弱さや子供ならではの無邪気な残酷さからそれがゆがんだものになり、ついには二人の仲を裂いてしまうことになる。そしてそのことは主人公のその後の人生に長く影を落としてしまい、戦乱を避けてアメリカに渡り小説家として成功したものの、その心には自分だけにはごまかせない罪の意識が残っていた。

旧知の人物から連絡を受けて戻ってきた主人公のその後の行動は、それまでの優柔不断な性格からは想像もできないほど大胆なものであり、その結果とてもひどい目にもあってしまうが、それでも彼にとっては長年の罪の意識を贖罪するための行動であり、「魂の救済」になったことだろう。

最後がもう少しわかりやすい結果になっていてほしかったが、これでも十分明るさが垣間見えるので良しとしましょう。ともかく良い本です。読んでみて下さい。
posted by takasan at 15:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月19日

「裁判員制度の正体」

<内容>
元判事の大学教授が「赤紙」から逃れる方法を伝授。
恐怖の悪法を徹底解剖。

裁判員制度の正体 (講談社現代新書)
裁判員制度の正体 (講談社現代新書)西野 喜一

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<感想>
裁判員制度というのが近々始まるらしい、ということを知っている人は多いが、どんな中身なのかを知っている人はほとんどいないと思う。本書はその中身を紹介しながら、この制度がいかに不完全であり、問題点が多いかが書いてある本である。

まあ制度自体が何だか無理やり作ったようなものなので、読めば読むほど裁判員制度が矛盾だらけで、しかも国民にとって不利益極まりない仕組みであることがわかってくる。


自分は一応、法律を勉強したことがある身なので、個人的にはまずこの制度が憲法違反(公正な裁判を受ける権利の侵害、という意味で)の疑いが濃厚である、という基本の基本のところでもうダメ、と思うのだが…

誰でも思うはずだが、基本的な疑問として「法律のことを何も知らない素人に判断させてそれで刑罰を決める」ということのいったいどこに正当性があるのか、ということがさっぱりわからない。

ちょっと考えればわかるが、平日の昼間に連続して数日間も裁判所に通うことのできるくらい時間に余裕がある人しか実際には裁判員をやれない、ということは、参加できるのは家庭の主婦とか、リタイアして暇をもてあましているご老人とか、後は学生くらいか。そんな人たちが頭を寄せ合って被告となった人の一生にかかわる運命を決めるということだ。
「あの人男前だわね、タイプだわ」「あのおねーちゃん、かわいいやんけ」「いやーん、カワイソー」とかそういう基準で決められてしまうかも、ってことだもんね。自分がそんな立場になったらと思うとぞっとする。

それでも現行の裁判官による裁判がまったくお話にならないほどひどいので、新しいやり方をはじめないといけない、とかいう事情があるのならわかるが、まあ多少の問題はあるものの、今のやり方がそんなにまずいと思っている人はそんなにいないんではないの。特に最近は判決の出るのが確実に早くなってるし。

その他にも考えれば考えるほど矛盾がいっぱい出てくるのだが、詳しくはこの本を読むとわかる。最後のほうはちょっとエキセントリックになっていて、「おじさん大丈夫?」てな感じになってしまっているのが惜しいが。

やっぱこの制度は始めちゃいけないんじゃないのー?
posted by takasan at 00:50| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月04日

「ミッドナイトイーグル」

<内容>
米空軍のステルス爆撃機が北アルプスに墜落!その搭載物をめぐって男たちの死闘が始まった。報道カメラマン西崎勇次もその渦中に…。かたや週刊誌記者の松永慶子は、横田基地に侵入・逃走した北朝鮮の工作員に接触する。吹雪の北アルプスと東京。二つの場所で、男と女は絆を取り戻せるのか。渾身の国際謀略サスペンス。

ミッドナイトイーグル (文春文庫)
ミッドナイトイーグル (文春文庫)高嶋 哲夫

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<感想>
高嶋哲夫作のサスペンスアクションもの。映画化もされ、けっこう派手に宣伝していたので知っている人も多いと思う。ステルス、核兵器、北朝鮮と道具立てがド派手でなんとなく面白そうだったので読んでみた。

その映画宣伝の露出を多く見てしまっていたので、読んでいて主役のイメージが大沢たかおと竹内結子に固まってしまってつらかった。ところであの映画はヒットしたのだろうか?

話の内容としては、北アルプスに墜落した米軍のステルス戦闘機に積まれていた核兵器を主人公が北の工作員と争いながら取りに行く、というもの。500ページ超と長めではあるが、テンポが速くて中間ダレることもなく楽しむことができた。最後のほうは場面が2箇所しかなく、それが交互に出てくるため単調な感じになって少し残念。

ただしちょっとばかり話がうまく行き過ぎのきらいがあり、いくら戦地を渡り歩いてきたからといって、報道カメラマンと新聞記者のコンビが(途中で味方がつくとしても)北朝鮮の工作員相手に渡り合ったり、週刊誌の記者がやくざの隠れ家に連れて行かれた容疑者を奪回したりする、というのはいくら何でも無理があるのでは?と思った。
まあでもダムの運転員がテロリストを相手にたった一人で立ち向かう某なんとかアウトよりはましかもしれないけどね。

結末が結末なので続編はありません。当然ですね。

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2007年11月17日

「Twelve Y.O.」

<内容>
電子テロリスト「12(トゥエルブ)」とは何者か!?
沖縄から米海兵隊が撤退した。それは米国防総省(ペンタゴン)が、たった1人のテロリストに屈服した瞬間だった。テロリストの名は「12」。最強のコンピュータウィルス「アポトーシス2」と謎の兵器「ウルマ」を使い、米国防総省を脅迫しつづける「12」の正体は?真の目的は?圧倒的スケールの江戸川乱歩賞受賞作。

Twelve Y.O. (講談社文庫)
Twelve Y.O. (講談社文庫)福井 晴敏

講談社 2001-06
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<感想>
これも江戸川乱歩賞受賞作。「亡国のイージス」「終戦のローレライ」など戦争・自衛隊ものを得意とする福井晴敏の作品。

おもしろいんだけど・・・くどい。というか言葉が多すぎる。まあそういう作風だと思うし、作者として言いたいこと(日本が国として国防というものに真剣に向き合ってこなかったこと?)を言わんとするがため、というのもあるんだろうけど、読んでると「あれ、さっき出てこなかったっけ?」というくだりがけっこうある。
もう少し言葉を少なくして、戦闘シーンをシャープにしてもらえるともっとおもしろかった、というか自分の好みにあったものになっただろうと思う。

そういう意味でもったいなかったのは、「ローレライ」と同様に秘密兵器とされた「ウルマ」が、もう少し派手な活躍をしても良かったのではないか、ということ。設定の割には良いところが少なくて、もったいない気がした。
あと護という奴は最初からほとんどウルマを守ることしか考えていなくて、上司の命令に従う気など全然なかったようだが、なんでこいつを対ウルマ作戦に参加させたのかよくわからないと思った。

10年も前の作品なので、コンピュータウイルスに目をつけたのは先見の明というべきだろうが、それでもいくら高機能といってもたかがウイルスがこんなに万能で何でも破壊できるという設定は、今の世の中ではちょっと簡単に受け入れがたいところがあるのはしかたないことだろう。

戦闘シーンは兵器に関する豊富な知識を生かしているので迫力があるのが救いではあるが、もうちょっと洗練されると読みやすくなったのではという気がした。軍隊ものが好きな人にはお勧め。

posted by takasan at 13:17| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月14日

「脳男」

<内容>
未知なるヒーロー誕生。乱歩賞受賞作

連続爆弾犯のアジトで見つかった、心を持たない男・鈴木一郎。
逮捕後、新たな爆弾の在処(ありか)を警察に告げた、この男は共犯者なのか。
男の精神鑑定を担当する医師・鷲谷真梨子は、彼の本性を探ろうとするが……。
そして、男が入院する病院に爆弾が仕掛けられた。
全選考委員が絶賛した超絶の江戸川乱歩賞受賞作。

脳男 (講談社文庫)
脳男 (講談社文庫)首藤 瓜於

講談社 2003-09
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<感想>
タイトルが意味もなくインパクトが強い本である。
ずいぶん昔、子供のころにガラスの容器に浮かんだ「脳」だけで生きている人間、という設定の外国のSF(題名忘れた。『ドウエル教授の首』ではなくて)という小説を読んだ記憶がある。その脳はテレパシーで会話し、やがて周りの人間を意のままに操るようになって・・・とか言う内容だったと思った。「まさかあの小説の設定のような内容なのか」とこのタイトルを見て思ったが、実はぜんぜん違った。

江戸川乱歩賞受賞作の中でも特に絶賛された作品ということで、エンタテインメント小説としては一級のおもしろさであることはまちがいない。
主人公は特殊な身体条件を持って生まれてきたために超越した能力を発揮するという、いわゆるスーパーヒューマンものであるが、その能力というのが非常に変わっていてまず驚いてしまう。そのうちに、連続爆破事件の犯人との戦いに巻き込まれていき、非常に緊迫感を持ちながらテンポ良く盛り上がっていく筋運びもなかなかである。
主人公の相手をする精神科医や刑事も十分キャラが書き込まれており、興味深い存在になっている。

この人はもともと作家ではなかったらしいが、それにしては小説の完成度が非常に高く、見事な出来栄えといえるだろう。

ただ、主人公の設定がなんとなく腑に落ちないというか、「え、そうなの?」と思うところがある。この主人公は「感情がない」という設定になっているのだが、「感情がない」から自分から動かずに人から言われるまで微動だにしないでじっとしている、というのは何か違うような気がする。「感情がない」からこそ本能のままに動くのではないの?と思ったり、とか。そのあたりは作者も気づいたのかどうか、最後の方では突然「本能的な欲求が欠落している」という表現に変わっている。それならわかるんだけど。

あと、この爆弾犯人はもともと素人(テロリストとかではない)なのに、なぜ短期間にこんなに上達というか、病院じゅうをパニックに落としいれた上、たくさんの人を爆殺するほどに恐ろしい腕になったのかよくわからなかったりするのだが、まあそのへんはご愛嬌ということで。

しかし、これだけユニークな主人公で、しかも無傷で姿を消したので当然続編が期待されていたがなかなか出ていなかったようだが、ようやくこの度「脳男2」が出たそうだ。どんな内容なのか非常に興味がある。


posted by takasan at 10:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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